Far from home
じっかぐらし!を抜け出して
元ネタは「がっこうぐらし!」でggってくれ。これは私の家族が新型コロナウイルスに感染し、どんな生活を送ったのかを書き残した備忘録のようなもの。
1/26(木)午前、母からLINEで連絡があった、「陽性だった、ごめん」と。
母とはその週の日曜日にファミレスで昼食を一緒に食べてから顔を合わせていない。というのも、母は月曜日からずっと泊まりでの予定があったからだ。「同居家族は濃厚接触者となる」という定義に厳密にあてはまるものなのか謎だったが、私は会社の指示に従い退社した。
帰り道に、今後容易に外には出られなくなることがわかっていたため、薬局で医療用抗原検査キットをいくつかとエタノールスプレー、手指消毒用のアルコールジェル、クイックルワイパーのシート(除菌タイプ)、アルコールウェットティッシュなどを買い込んで帰宅した。
帰宅してすぐに自室のある2階に行こうとしたが、玄関からうっすら見えるリビングの様子に愕然としてしまった。陽性の母と、父が、テレビを見ながら大きな声で談笑しているのだ。即母親に電話をして、自分の寝室で大人しくするように言った。母は「だってお父さんが今すぐ洗濯して欲しいっていうから・・・。洗濯ものが終わるまでテレビ見てただけだったんだけど、それがダメなの?」などと言い出したので、厚労省や県庁、保健所の公式サイトに掲載されている「家庭内感染を防ぐために」といった内容の資料をLINEに送りつけて、寝室で目を通すように促した。
母をリビングから追い出し、私は父に薬局で買ったものを提示しながら、二手に分かれて消毒作業を行おうと提案した。父親の返答は、なんかざっくり言うと「お前は頭でっかちで大袈裟。コロナはただの風邪で、お前は政府に騙されている。ただの風邪なんだからうつったところで何も問題はない。消毒なんて必要ない。そもそも俺はコロナになんかならない」ということだった。
いや〜・・・キツイっすわ・・・。
そんなことをヘラヘラ笑いながら言う父親を、おそらく私は生ゴミでも見るような目で見てしまっただろう。まあ仕方ない、実際生ゴミ・・・どころか、生ゴミは畑に撒けば肥料になるところ、私の父は感染症対策の足でまといでしかないので、ゴミより下の存在だなこいつって思った、正直。
家の中を消毒しないどころかマスクもしない、隔離中の母との会話は母の寝室に突撃して行い(母によると2メートル以上の距離は当然確保できていないらしい)、家族に陽性者がいたからってなぜ自分の外出が規制されなきゃいけないのか理解できないと文句を言い、当然のように外をうろついていた。
あの〜、たまにニュースで見るでしょう、絶対にマスクしない人や、ホテルで隔離されてるのに逃げ出す新型コロナの患者とか。あれうちの父親。ニュースのコメント欄に「家族が止めろよ」って書いてあるのを見るたびに、家族が止められたら苦労しねえよってツッコんでる。
コロナはただの風邪だの、政府に騙されてるだの、こんな意見も尊重されるべき多様性の時代なんですかね〜〜〜なんて不貞腐れていたけれど、やっぱ山奥で1人で自給自足の生活をしているわけではないのだから、周囲に配慮して生きることはモラルとして必要だろうよと言う結論には至った。多分父は時代が時代だったら何かしらの診断はおりてそうだなってくらい他人への共感力がないので、色々とお察しではあるけれども・・・。
そんなことを考えつつ、父親が普段通りの生活をこれまでのように送ると言うのであれば、2つあるトイレと洗面台のうち、父親の寝室に近いものを父母用として割り当てた。お風呂と洗濯機は残念ながら1つしかない。金曜日までは消毒して使用していたが、これなんかこのままいくとヤバいかもしれないな・・・と思い、金曜日の夜から使用を止めた。ぶっちゃけ、父親だけがコロナにならないわけなくないか。母親とはきちんと隔離生活を送れていても、父親は家の中をマスクもせずにウロウロしている。父親もすでに陽性とみなした方がいいかもしれない、と思い共有していた洗濯機とお風呂の使用をやめたのだった。
母の発症から2日後と3日後の土日に、きちんと家庭内で隔離生活が送れていることを前提に私が陰性であれば、私の自宅待機は解除される。木曜から土曜までなんとかネットスーパーと仕出し弁当でやりくりしていたが、欲しいものが手に入るのが最短でも翌日のお昼というのはなかなか不便な生活だった、と令和に生きる私は思う。
母は母で、私が送った資料に全て目を通し、家庭内感染を防ぐためにどんな生活様式に変えなきゃいけないのかを把握していた。その上で母も理解していた、父親がいる限りその生活様式には変えられないことを・・・。母がどんなに言っても、父は母の寝室に突撃する。何のためのスマホなんだよって感じでしかないんやけども、父はこだわりが強く、変化に弱い。弱いってか単純に自分のやり方を変えることができない。「あなたは日曜日に陰性だったら、家を出て市街地のホテルかどこかでしばらく生活しなさい。費用はもつから」と母は諦め気味に私に電話で言った。それしかないよな〜・・・と私も思ってた。
平日はリモートワークをしつつ、母のご飯のお世話(と言っても菓子パンや仕出し弁当だったのでそこまで負担はかからなかったけど)、母が通った廊下や階段の定期的な掃除と消毒、洗濯、ネットスーパーへの発注、みたいな細々とした家事を行なった。
日曜日、私は無事に陰性だったので、久しぶりに堂々と外に出られるようになった。まずはペットのハムスターのケージの掃除をした。ハムスターにコロナがうつったらいかんでしょと思い最低限のお世話しかしていなかったので、溜まっていた分一気に片付けた。そして抗原検査キットや咳止めの薬、母が食べたがっているヨーグルトなどを買いに走った。その間に近所のコインランドリーで溜まっていた自分の洗濯物も全て洗濯した。帰ってきたら母の仕事を母の職場で行い、荷造りをし、ホテルにチェックインした。そのすぐ後に私の自宅待機解除を知った弟妹(同じくコロナかインフルにかかっている)から、すぐに買ってきて欲しいもののリクエストが来たので買いに走った。スタバでご飯になりそうなものをテイクアウトして、ホテルでダラダラと食べて今に至る。
なんかよくわからないけれど、忙しかったような気がするここ数日。働いていないのになんでだろう。
そういえば今日(日曜日)買った咳止めは、1つではなく2つだ。母と、ひどく咳き込んでいた父のために買ってきた。父は今日の検査では陰性だったらしいけど、明日はどうなるんだろうなあ。ま、新型コロナウイルスはただの風邪らしいので、私がそこまで深刻に心配する必要はないな。
ちなみにここで、家庭内に感染者が出た時にめっちゃ必要だったものを書いておく。今後インフルの流行の時とかにも役に立つだろう。
・使い捨てビニール手袋
・消毒用エタノールスプレー
・手指消毒用アルコールジェル
・キッチンぺーパー
・医療用抗原検査キット
・イオンウォーター(ポカリスエット)
最後にここで、今回のことで以前から薄々思っていたが確信に変わったことを話そう。私はネットde真実だとか、反ワクチンだとか、陰謀論だとか、スピリチュアルな話とか、そういう類のものが嫌いだし、それを他人に押し付ける人も嫌いだ。それは恐らく、自分の父親をそこに重ねて見ているからだと思う。私の父も、占いにハマる母(=私の祖母)をすごく見下しているのに、ネット上の何の根拠もないような話・・・コロナはただの風邪だし政府の陰謀だ、俺はかからない、みたいは非科学的なことはなぜか心底信じている。
娘から厚労省の発表を見るようURLを送られても、それはなぜか変わらない。私は父と長年接してきて気づいたんだけれど、父は「自分が理解できないものを大したことのないものだと判断し、軽く扱う」のだ。そしてその認識は、ネットのエコーチェンバーで強化されてしまう。さらに父は中身で判断できないからか、外見的な権威に弱く、知り合いの医者(男性)だとか、東大卒の社長(もちろん男性)だとか、そういう人に意見を否定されると素直に聞き入れられるが、家族の反対意見は聞き入れられない。
愚かだなぁ、と本当に思ってる。最近本当にひどくなったなぁ。年食ったから?プライドが鬼のように高いから?
かくして私は「勉強が苦手なのに」「人の意見を聞き入れられない」「男性」がとにかく嫌いになった。要は会社に大量にいる、年功序列で上にあがっただけなのにプライド鬼高いおじさん達(30代〜70代)基本的に嫌いなんだよね。あんたらが出世したのは「優秀だから」ではなく「長く勤めてるおじさんだから」であって、因果関係を誤って捉えるなよと思ってる。
集団というものがうまく機能するためには優秀なリーダーが必要だが、これを伝統的な価値観のみで「年齢が高い」から、そして「男性」だからという理由だけで、問答無用でおじさんをリーダーとして神輿にのせて、ずっと担ぎつづけなきゃいけないっちゅーのは無理があるよな〜、と今回のコロナのことで改めて思った。少なくとも、今の私の父にはかつてほどの権威はない。家族の誰もその神輿を担がなくなってしまったからだ。特に妹達は化学の研究者やら医療従事者やらになったわけやし・・・、父親のいう世迷言なんて、誰もまともに聞きやしない。
以上、なぜこんなにも会社のおっさんにイライラすることがあるんだろう、という疑問への、そこに自分の父親を重ねているからというシンプルな答えという話。
私はこのままコロナにならず、無事にこの冬を乗り切れるのか?いつ実家に戻れるのか?それはまだ誰にもわからない・・・